大好きな…前編













大好きな、大好きなボロミア…

















大きい人達を見るのは初めてじゃなかった。
ブランディバックはホビット庄の外に出る事も多かったから、彼らとの付き合い方もよく知っていた。
簡単さ、相手の話を誉めればいいんだ。
もちろん馬鹿にしてるんじゃない。
誉められて嬉しいのはどんな種族も一緒だからね。僕達だって誉められればすごく嬉しい。
大切な物を誉められればもっと嬉しい。相手の喜ぶ顔を見るのだって嬉しいよ。
多分、大きい人達は他の種族よりも僕達ホビットに近いんじゃないかな。
彼らが大切な物や大好きな事の話をする時と、僕達が秘密を隠してる時の表情がすごく似てるんだ。
そして僕はメリアドク・ブランディバック。ホビット庄一、秘密を見つけるのが上手いのさ。

そう、僕は大きい人達とは友達になれるんだって事を知っていた。
だから裂け谷の秘密会議で初めてボロミアを見た時も、恐いと思わなかった。
メリーはちょっと恐いね。と言っていたし、サムは不信そうに見ていたし、フロドはあまり目を合わせないようにしてたけど、僕はすごく真面目な人なんだなと思ったんだ。
だって正直に自分の意見を伝えてた。真っ直ぐに相手の目を見て話してた。自分の考えとは違った筈の会議の決定を躊躇う事無く受け入れてた。
僕はその時、きっとこの人が好きになるだろうと…そう、思った。

だからピピンと賭けをした。
ボロミアさんが恐くない方に今日のおやつを賭けるってそう言ったんだ。そうしたらピピンのやつ、僕もそっちがいいって言い出した。
恐いって言ってたくせに。賭けになんないじゃないかって言ったら、だって今日のおやつが増えるよりボロミアさんが優しい人だった方が嬉しいよって言うんだ。
もちろんそうさ、当然だよ。でもそれじゃ賭けは無効だな。
ちょっとだけ残念そうな顔をしたら、ピピンも同じ顔をしてたので二人でクスクス笑った。
本当はボロミアさんが恐くなくて、しかもおやつを分けてくれるような優しい人だったらいいのにね。
ピピンが贅沢な本音を言ったので、僕もそうだねって本音で答えたら、すぐ近くから穏やかな声が降ってきた。

そう仰っていただけるのならば、わたくしからの招待を受けていただけましょうか。

ビックリした。
すごくビックリした。
僕は思わず飛び上がりそうになったし、ピピンは本当に飛び上がってた。
慌てて声のした方を見上げると、会議の時とは別人みたいな優しい笑顔をしたボロミアがいた。

初対面の方から好意を向けられるのは光栄な事です。小さき方々よ、ぜひわたくしの好意も受けていただきたい。御一緒にお茶などいかがですかな。

そんな風に言われて、いたずらっぽく微笑まれて、もちろん今日のおやつもありますぞ。何て事まで言われたら、もう僕達は逆らえないじゃないか。
間髪入れずにピピンが抱きついて、ボロミアさん大好きー!と叫ぶ。…しまった、先を越された。
それでも僕は上手く平静を装って、僕もあなたが大好になりましたよ、ボロミアさん。と礼儀正しく振舞ってみせた。
彼は僕達の頭がクシャクシャになる程に撫でると、さっきよりも嬉しそうに笑った。

とても嬉しく思います、小さき方々よ。それでは、わたくしの部屋まで御案内致しましょう。

そう言って僕達を軽々と抱えあげた。
ピピンは大喜びではしゃいでたけど僕は、子供じゃないんですけどね、と苦笑してみせた。本当はすごく嬉しかったのは秘密だ。
でもボロミアは、わたくしがそうしたいのですよ。ですから諦めて大人しくしていて下さい。と言って僕達を降ろさなかった。

とても、幸せな時間だった。
だからこの時の会話も、部屋まで運ばれる短い道程も、その後に味わったお茶やおやつの美味しさも、絶対に忘れない。
それは僕とピピンの大切な、大切な宝物だった。










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