BELOVED



2002年・夏。

今年もまた、一季節で私よりも遥かに背の伸びた向日葵が、太陽に向かって鮮やかに咲き誇っています。

もうリリースされてから、6年スか。
早いような、長いような。『BELOVED』の頃は、確実に知ってたです。カラオケで歌ってましたです。

観てたんだよ…「男の子と話す時は緊張する」ってのたまっていたてっこさんを!(Mステ)
そして森田の後ろで含み笑いしている不気味な男の影…いえいえ、てっこさんを優しく見守っているたっくんを!
「おもしれぇ人だなー」とボンヤリ思いながら、カラオケの練習してました(悔やんでも悔やみきれない)。

はぁ…なんであの時ひらめかなかったんだろうなぁ…(*´Д`)。
ドピッシャーーン!!!と天からの啓示を受けたのは、それから1年後の事でありましたとさ。

まぁ、私の話はこんくらいにしといて。

『BELOVED』。

意味は、『最愛の』。

高校生たっくん。
辞書をめくって、素敵な言葉を捜しておりました。
ふと、目に止まった単語。心に残った言葉。
それが、『BELOVED(最愛の)』でした。

ロマンを嗜む高校生、たっくん。
この言葉に惹かれ、思わず赤のマーカーで囲いました。

今はまだ、使えない。
きっと言葉負けしてしまう。
でも、いつか必ずこの言葉を使いたい。

『BELOVED』というタイトルの曲を作れる日まで、GLAYをがんばろう。

そう誓って、辞書を閉じたそうな(一部脚色アリ)。

それから月日は流れ、1996年・春。
『BEAT out!!』が、オリコン初登場1位を記録。

やっとの思いで掴んだ成功。名誉。

その影に存在していた、挫折。後悔。

「贖罪」がアルバムの根底に流れるテーマだった事からも推察される、たっくんの孤独な戦い。
全部を出し切った。逆さに振っても何も出ないほど。

売れるように作る技術も(『yes,Summerdays』)。
希望も(『生きてく強さ』、『グロリアス』)。
絶望も(『原色の空』、『Together』)。

そして、「絶望」のギリギリがけっぷちから、「希望」が生まれた曲。
がけっぷちから生まれたからこそ、真実がある。
たとえ、悲しい結末だとしても、どうしてもたっくんが欲しかったもの。

『軌跡の果て』。

この曲は、また次回。
『BELOVED』と同じくらい、GLAYにとっては最重要的な位置なので。

あるひとつの持論があるのですが。
GLAYの音楽が変わった時を、転換期と呼ぶならば。

第一転換期は。
まさに、『BELOVED』からだと、思うのですよ。

『グロリアス』から、GLAYさんはブレイクした訳ですが、たっくん、この曲で吹っ切った。
何をどう吹っ切ったのかというと、広い目で見なくなった。自分を着飾る事を徹底してヤメた。
ヤメたから、本来たっくんが持ち合わせてた、「人間への愛情」が全面に出てきた。

なんでヤメたのかは、たっくん自ら「もう疲れた」と。
ものすごく後ろ向きな方向転換(笑)。けれどもその転換がドンピシャだったのかも。
市川さんにも、「精神衛生上、君にとっては宜しい決断だ」と(^^;)。

「贖罪」がテーマの『BEAT out!!』の楽曲群は、どこか美意識に固められた曲ばっかりのよーな。
そこでもたっくんはとことん本気で対峙してたんだけど、まず、「自分が不幸である事」が前提条件かな。
ううむ、「不幸である事」というか、「目の前の現実より、遠い将来を嘆いてる」感じがしてました。
ぶっちゃけ、それが男の人のロマン。たっくんはこの傾向が人10倍くらい強かった(´ー`)。

『SPPED POP』は、そこはかとなく感じられる、そこはかとない絶望感が顕著ですけども。時代ですね。
ハナっから世の中を諦めてるよーな、大人が良く言う、薄っぺらい絶望。そこにも価値はあるのにね。

で、『軌跡の果て』で、溜まりに溜め込んだ負の感情が大爆発を起こしてしまった。
曲に込めた想い。無意識に発したSOS。てっこさんとの衝突。自分が分からなくなる。

「助けてくれ」。

「手を差し伸べてくれるのを待ってたんだ」と、後のインタビューで告白してます。

SOSに気付いたてっこさん、歌い方を変えました。
初めて生まれた、歌でのやり取り。
歌い紡がれ、完成した曲。

たっくん、嬉しくて嬉しくて、涙を流しました。
「やっと、本当の意味で救われたんだ」と(詳細はまた今度&WTKを見てちょ)。

歌を作るという事が、自分にとってどういう意味があったのかに気付いたたっくん。
この時、心は果てしなくニュートラルな状態に還ったのでしょか。

まっさらな、ありのままの状態。
後悔や負の感情から開放されて、思うがままに。

そして、生まれたのが、『BELOVED』でした。

新しいGLAYサウンドの始まり。

単身ロンドンに飛んで、曲作り。
目的地へ向かう飛行機の、エンヤを聴きながらひそかに決意していた事。

「まだどういう曲になるかは分からないけど、次に出来た曲は『BELOVED』ってつけよう」

高校生の時は、あまりにも大きなテーマなので、タイトルにするのを躊躇った言葉。
憧れの言葉だった。自分にはまだまだ遠い言葉だと、そっと辞書を閉じた。

いつか、必ず。

96年・春。
たっくんは静かに気付いていたのかも。
欲しがって、ひたすら望んだら、ポンと授けられる言葉ではなく。
普段のさり気ない日常ので、『BELOVED』という気持ちは、優しく育まれるんだって事。

そしてそれは、当たり前のように、傍らにあるものなんだって事。

ロンドンに着いて最初に書き始めたのは、後に『May fair』となる楽曲でした。
『May fair』には、『5月の晴れた日」という意味もありますが、イギリスの地名でもあります。街名?アレ?

ピアノを弾きながら構想を練ってました。
最初は、この曲が『BELOVED』と名付けられる予定でした。

けれど、休憩時間に何の気なしに浮かんだメロディー。
たっくん、忘れないウチに、慌ててペンを走らせました。

ものの5分で完成。

『May fair』の完成に掛かりきりだったたっくん。
生まれたばかりの曲のアレンジを、日本にいるてっこさんに頼みました。

楽譜をFAXで送って、歌詞を受話器越しに口頭で伝えて。
メロディーを歌いながら伝えたそうな。照れながら。そりゃ照れるわな(ポ)。

こうして、GLAYを始めた頃からたっくんが思い描いていた『BELOVED』は、形あるものとなりました。

形なきものを、形あるものとして残すための手段が、歌を作る…表現するという事ならば。
『BELOVED』は、ほんとうに生まれるべくして生まれた、優しい愛の歌だなぁと思ってみたりしました。

歌ってすごいなぁ。
形のないものも、手をかければ、形として残る。
誰よりも永遠を欲しがるたっくんは、変わらないもの…“歌”を作る事に、全てを賭けてるんだな。

こう…『BEAT out!!』での、たっくんの心の変遷を、インタビューなり歌詞なりから追ってってみると。
『BELOVED』は、苦悩とか孤独とか罪の意識も全部ひっくるめて、絶対の苦しさも飲み込んでる歌なんだと。
歌詞ももう…ただ優しいだけじゃなく、幻を追うんじゃなく、ただ目の前を見つめてるっていう感じ。
悲しいほどに、おだやかに。

「目の前にこそ、“忘れていた大切な何か”が、微笑んでくれているんだよ」って、教えてくれているようです。

ぼくは、どこまで歩いてきたのだろう。
ぼくは、どこまで歩いてこれたのだろう。

夏がめぐるたび、向日葵を見つけるたびに、切なさがこみあげる。
大切だったはずの恋すら、置き去りにしてしまった、あの夏。後悔してもしきれない、想い出。

華やいでいる街角と反する、主人公の心。孤独感と、置き去り感。

…情景描写と心理描写が渾然一体。
しかも切ない叙情的なメロディーで、Aメロから完全にココロ鷲掴み。

忙しい毎日。仕事に忙殺される日々。
何が大切なのかも見えなくなって、優しさを失ってゆく。
素直になれずに過ちを重ねては、誰かを傷つけて…そして結局自分すら傷つける。

繰り返す毎日。
別々の道を歩いてきた人同士も。
同じ道を一緒に歩いてきた人同士も。

いつかは訪れる別れ。たっくんが喩えた交差点。

でも、また、いつか交わる時も来る。巡りあう。

見えない未来に戸惑い、迷っては立ち止まる。
自分の思うように歩き続けられる人もいれば、歩けない人もいる。
それでも、人は一歩一歩、来た道を確かめるように踏みしめながら、少しづつでも歩き出すのだろう。

長い長い道のりの途中で、出逢うべくして出逢った友。
遠ざかる記憶と共に、大切な友の声すら心に届かなくなってしまった事への嘆き。

立ち止まっていたたっくん。
簡単な心のやりとりすら忘れ、「愛されたい」と願う事を諦めかけた日々を越えて。
「自分らしさ」を手にして、もう一度、歩き始めたんスね。

微笑みも、涙も、全部を受け止めて。
全部を受け止めてくれるのは、愛されているという事。
繰り返す日々ので、いつでも、どんな時も。

“育んだ 愛の木立”。
力強く土のから顔を出した小さな芽を、愛と呼ぶなら。

土が乾いたら水を。
弱々しくなったら肥料を。
愛情を込めて育て続けて。日照りの日も、嵐の日も。忘れずに。

そんな風にして、大切に育まれて、大きな愛情になるのでしょう。

自分らしく生きてゆくのに、あなたがそばにいてくれたら。

「自分だけ」では、「自分」ではない。
…ん?ますます禅問答の迷宮に突っ込んでるよーな。

えっと、要するに。

「あなたがいるからこそ、自分らしくいられる」という事で。

逆にしてみれば。

「あなたがいなければ、自分らしくいられない」って事。

喜んだり、笑ったり、悲しんだり、いろいろな感情が生まれるのは、あなたがいるから。
あなたがそばにいてくれるから、自分らしい生き方ができるんだ。

たっくんにとっての“自分らしさ”とは。

ずっと夢を追い続けてこれたのは、すぐそばに温かい人達がいてくれたからこそ、なんだと。
あたりまえの日常こそが、1番大事なものだったんだと気付いたみたいな、ね。

夢から覚めた、これからもあなたを愛してる。

夢から覚めた、今以上、あなたを愛してる。

たっくんの夜明けですね…(´ー`)。

余談として、『無限のデジャヴ』海賊盤に、てっこさんとたっくんでセッションやってるシーンがあります。
飽きる事なく、ギターを爪弾くたっくんと、それに合わせて懐かしそうに歌うてっこさん。

歌い出したのは、『シンプル・マインド』。
記念すべき、GLAY結成初のオリジナル曲でした。

…コード、まるっきし『BELOVED』と同じ(笑)。

照:「(歌いやめて)同じじゃないか!(苦笑)」
琢:「8年やってても、全く変わっていない事に気付きました(苦笑)」

無意識のウチに、メロディーも、原点へと戻ってたんだね。

GLAYがデビューしてから、3度目の季節でした。

ここからは、たっくん自身による『BELOVED』プレビューです。

いつかこれをテーマに曲を書こうと辞書に赤線をひいたのは17歳頃の事。
日本へ向かう飛行機の中、やっとこの名前を付けようと決心した96年4月。

とはいえ、『May Fair』のアレンジに夢中でこの曲のアレンジはTERUに任せた事。
(そしたらなんと『Europe』の『FAINAL COUNTDOWN』みたいになって返ってきた!)

アイスランドの事、暗闇を脱出できた事、ずっと一緒にいたいと思った事、100万枚をやっと達成できた事、
長いツアーの事、借りは返した事、目標が生まれた事…数えきれない想いがあるのです。

もはやスタンダートです。俺の中で…。【会報より抜粋】

20020714 up