p u r e   s o u l

 

ハイ、続き( ´д`)ノ。

"pure soul"を失いかけている、自分自身へ向けられた歌。

内省と回帰。
たっくんは、こういう自分の心の奥底を紡ぎ出す歌詞がものすごい。
ホントにものすごい。稀有なソングライターなんだと、つくづく実感させられます。

他の歌詞見ても思うんだけど。
自己の内面を取り上げる他の人達の歌詞には、"書いた人にだけしか分からん感覚"ってのがあって。

各々独特の狂気っていうか、爛々としてるような言葉の叫びというか。
正気の壁が崩れた僅かな隙間に、熱心なファンは惹かれて、集ってくるのだけど。

たっくんが書くコレ系の詞って、物静か。
ひたすら、正気のお面を被りつつ(意地でも)、こんこんと自分の真実を掘り下げている。

物静かなのがかえってコワイという二面性も交えつつ(笑)、その静かさが潤滑油となってる。
誰にでも分かる言葉で。誰にでも伝わる言葉で。

琢:「俺しか分からないような事を、テルに押し付ける気はない」

全てはこの言葉が物語ってますが。
GLAYの分かり易さは、ソングライターとボーカルの、この絶妙な関係という事に尽きるのかもしれません。

絶妙というか。
"優しさ"というか、それをお互い与え合っているような。

ピュア・ソウル…純粋なこころ。

人気の高い曲。
この曲に励まされた、勇気を貰ったという人は、とても多いです。
ライブで演奏されると、涙を流して聴き入る人がたくさんいます。
何故だろう。

みんな、満たされない気持ちを抱えているから。
みんな、傷付いて傷付いて、毎日暮らしているから。

大人になる、という事は、孤独になる、という事なのかもしれない。

絶対的な愛情から離れて、独りで生きてゆく。

親(あなた)の言葉も聴こえなくなるほど 遠くに来ました 幼い頃の子守唄を手に

本当に、聞こえなくなる日が来る。
自分の力で、自分の道を切り拓いてゆく日。

初めて独り歩き出した 幼い僕を見つめるその愛

このフレーズで、締め括られている『pure soul』。
大切な存在を忘れないように。これからも歩いてゆく決意。

決して「愛って素晴らしいね!」的な、愛情賛歌ではない歌。
けれど、華々しく愛情について歌ってる歌ではないからこそ引き立つものがある歌。

何不自由のない暮らしだな だけど何か満たされぬ 
  そんな夜もあるだろう そんな夜もあるだろう

今、自分は不自由のない毎日を手に入れて暮らしてるけど。
それとひきかえに、失ったもの。満たされない、何か。

必死で掴もうとしている栄光は 大きな意味を明日に投げかけたとしても

栄光って、夢?
少年の頃から追い続けた、純粋な夢?
それとも、印税ガッポリ、メシが食える、レコ大受賞、紅白出場とか、物理的なもの?

初期の仮歌では、"栄光"は"真実"と歌われていました。

望まない結末。
自分の思い通りにコトが運ぶのは、数えるほどしかない。
ギリギリと口唇を噛み締めながら、それでも人は受け入れる。

避けられぬ命題を今 背負って

『命題』って何だろうと辞書引いても、イマイチ分からんでした。
『命題』つったら『立言』でしょ。その命題について真偽を述べるのが立言であって(混乱)。

…何を背負おうとしてたんだろ。
その『命題』こそ、タイトルの『pure soul』そのもの。

琢:「どうあったって汚れるしかないこの世の中で、純粋なままの心でいられるか…そういうのを問うてるんです」

純粋なこころ。
生きる事は、何かを知る事。
知った分だけ、前のままの自分ではいられない。
そんな日々の繰り返しので、どれだけ純粋な心を失くさずにいられるのだろうか。

その命題を背負って。
真夜中、行くべき道を迷い、つぶされそうになって、もがいて、手探りで出口を探している。
たっくんの悩みの深さが、すんごく伝わってくるのは、私だけでしょうか。

そして、みんな、それぞれが背負う命題は違っても、そういう夜があるのではないでしょうか。

声を上げ 駆ける少年を 振り返る余裕すらなく
  擦り切れた若さの残り火を この胸にくすぶらせている
    ――…未だ夜明けは遠く

少年…純粋さの象徴。
幼い頃の自分でもあり、友かもしれない。
何となく、『テッコのホリークリスマス』で歌われている『君』と重なります。

振り返る余裕すらない、立ち止まってはいられない、時間のスピード。
若さの残り火。情熱とか、無垢さとか、それこそ"pure soul"。
使い物にならなくなりそうな、胸に留まり続けた炎は、それでも尚くすぶり続けてる。
焦燥、苛立ち、今にも消えそうな炎だけれど、決して消えはしない、若さの炎。

夜明け。
夜明けは、未だ来ない。真夜中のまま。
たっくんにとっての"夜明け"って何だろう。"幸せ"?

"幸せ"なんだろうな。
"安らぎ"とも言うかも。

『MERMAID』では、「振り返り微笑む夜明けに、幸せで、あればと願う」とあるけど。

うわ、なんだかんだで歌と歌は繋がっているんだね。
…たっくんは、あれから振り返って微笑む事が出来たのかな。

2番は、ひたすらたっくんの独白です。

「生きてゆく為の賢さを今一つ持てずにいるの」
   と誰かが不意にボヤいても それはみんな同じだろう

たまらないトコっす。
てっこさんの歌声、ものすごく力強くて、そこら辺もたまらんです。
ドームビデオは最高潮。何度聴いても鳥肌が立つ。そして泣ける。

吐き出すように、歌ってる。
そんなてっこさんに自分を重ねては、代弁してくれているように思うのです。
一種のカタルシス(精神の浄化)。それでもいい。

生きてゆく為の賢さ。
要領よく出来ればいいのに。
賢さを持てたら、ほんとに楽にやっていけるんだろうね。
でも、それをノドから手が出るほど欲しているのは、誰もが同じ事で。

「みんな同じだよ」って歌われる事で、それを聴く事で、救われた私でした。

ささやかな喜びの為に いくばくかの情を捨てた時 
   「夢を大事にしろよ」なんて いつからか言えなくなっていた

"pure soul"を失いかけている事への嘆き、後悔。
人生の岐路、とまではいかないけど、日々のでのちょっとした失敗というか、やりきれなさというか。
小さな後悔の連続。積もり積もって、やがては取り返しのつかない有様になってしまう。

ドラマーの度重なる脱退とか。
GLAYをもっと前に進ませる為に、あえて下さざるを得なかった、悲しい決断。
「夢を大事にしろよ」…自分にこんな事を言える資格があるのか。

色んな事。たとえば。
ひとつの物事…気持ちを取れば、天秤にかけていたもうひとつは選択できなくなるという事。
どっちも取れるなら。道が一本道であれば。中々そうはいかないけれど。つうか不可能なんだ。

「独りにはなりたくない」と 泣き濡れた夜もあったな…

………(TДT)。
てっこさんの、「なぁ〜りたくないとぉ〜っ」の必死さに、涙腺を刺激されます。

大人になるという事は、独りになるという事。
独りになりたくないから、人は愛すべき人を探すんだ。
寂しいから。ただただ、寂しいから。
こころの拠り所。自分が自分である為に。

たっくん…独りで泣いた事もあったんだね(T〜T)。
こういう冥いトコロも何もかもを曝け出して、根本から書いてるから、圧倒的な共感を呼んだのかな。

あの日々の2人がなぜにこんなにも愛しく見える
   ずいぶん遠くへ ずっと遠くへ 2人肩を並べて歩んだけれど

…何か、悲しいね…。
過去の日々が愛しく見えてるという事は、現在…今はそこまで幸せではないって事で。
"pure soul"を失くしかけて…日々の出来事に縛られて、本当の事が見えなくなって。

ずっと一緒に歩き続けた存在に対してすら、"今"よりも、"過去"を求める悲しさ。

肩を並べて歩き出して、ずいぶん遠くまで来て、ずっと遠くまで来て。
ずっと遠くまで一緒に歩いて来れたのは、2人の間に何があったからだろう?

愛は愛のままじゃいられず いつか形を変えるだろう
   共に生きる家族 恋人よ 僕は上手く愛せているのだろうか?

そして、このフレーズに辿り着く。
おそらく、作最も気持ちを絞って…何も出なくなるまで絞って出した果ての言葉だと思います。

人は変わる。
周囲は変わる。
胸に宿っている気持ちだって、いつかは変わる。

たっくんは、「永遠を信じる、努力する」と何度も話しているけれど、裏を返せば誰よりも信じてない。

「永遠なんてない」と、肌で…現実で見せつけられた事があるのも、ひとつの起因なのかもしれない。
"ない"という事を知っているからこそ、手に入れたものを全力で守る。あんまり必要のないものは、いらない。

信じたがっている"人と人との愛情"も、いつか壊れてしまう日が来る事を恐れてる。
"愛が愛のままじゃいられなくなる"日。どんな事が起こるのかは、未だ私には分からない。

でも、"形"は変わったとしても、残るものは変わらないはず。

上手く愛す…器用に愛する?その意味も、あまりよく分からない。
不器用なら、尚更、"愛されている"という感覚は、伝わるもの。
むしろ、無心になればなるほど、伝わるもんだと思っているけれども。

…待てよ。
もしかして、ここで言ってるのは、"多く"の身近にいる愛すべき人達?
対象は、"たったひとり"じゃなくて、"複数"?(歌詞読め)

分かった。
ここでは"自分"と"あなた"と共に。

傍にいる、沢山の人達。
家族も、傍にいる人も、すべての人に対して歌ってるんだ。

これまた裏を返せば、「愛せているかな?」と不安がるのは、「愛されたい」と願う心から発せられてるからで。

家族の愛情って…何よりも普遍的なものだけれど。
その普遍的な愛情以上に、信じたいもの…信じられるに値するものを、彼は見つけたんだ。

よくできた解答の果てに 悩み抜く世の中はなぜ?
   平凡で手アカのついた言葉でも 「愛している」と伝えて欲しい

遥か遠い過去から、使われ続けてきた言葉。
これ以上の言葉はない言葉。平凡…というか、スタンダード。

「愛している」という言葉。

『世の中』には、自分も含まれてるみたい。
最良の選択や、答えが目の前にあっても、どうしても悩んでしまう。
立ち止まっては前に進み、立ち止まってはとまどい、迷う。

でも、揺るぎ無い気持ちもある。
それがきっと、「愛してる」という気持ちなんだろう。

夜明け前 独りで高速を走った 
   過ぎ行く景色 季節 想い 憤り 全てを越えてみたくて

今もたっくんは悲しい時は高速をぶっ飛ばしているようです(笑)。
良い子は決して真似しちゃーいけません。ひとつ間違えたら死にます(^ー^;)。

真っ暗な首都高をただひたすら走るたっくん。
疾走している感覚と、疾走する時間の感覚が重なり合うんだろうな。

時間、想い、怒り…全て過ぎ行くのが早くて。
そういうもの全てを飲み込むくらいに、更に先に行きたい。先に行かなければ。

『生き急いでる』…ふと、そんな感じがしました。

賽を振る時は訪れ 人生の岐路に佇む
    今いる自分を支えてくれた人 この歌が聴こえてるだろうか?

自分に関わってくれた、全ての人達へ。
今も傍にいてくれている人。
今は遠く離れている人。
そして、空高くから見守ってくれている人も。

沢山の人達に支えられて、ここにいる。

生きてゆく上で、果てしなく存在する岐路。
その岐路を前に、"pure soul"を抱えて、自分を愛してくれた人達に問い掛ける。

祈るような毎日の中で もっと強く生きてゆけと
   少しだけ弱気な自分を励ます もう戻れぬあの日の空

祈るような毎日。
この言葉、すごく好き。
今まで言葉に出来なかった感情が、ピッタリ当てはまっているようで。

想い出ので広がる空がある。
あの日見た空が、今突きつけられている現実にくじけそうな自分を励ましてくれる。

どんな空だったんだろう。
その空に抱かれていた自分は、どんな未来を夢見ていたんだろう。

"少年"は、あの日見た夢をかなえるために、ただ一度きりの賽を振る。

"何か"を恐れて、街を飛び出した少年。
独りにはなりたくないんだと、泣きじゃくった少年。
容赦なく流れる時間すら追い越そうと、アクセルを踏みしめた少年。

"少年"は"少年"のまま。

夜明けが訪れるのを、ずっと待っている。

20020729